昨年、ライアットのCEOがONE-SHOTと呼ばれるブログシリーズを連載していたのをご存知でしょうか?今後私たちはそのブログを拡張し、ライアットのリーダーたちが情報を発信する場にしていきたいと考えています。今回は、ライアットゲームズeスポーツ部門のプレジデントJohn Needhamが筆をとり、ライアットにおけるeスポーツの未来、eスポーツ業界の全般的な経済状況、そしてライアットで進めているWorlds 2023以降の計画についてお話しします。要約すると…ライアットはeスポーツに「オールイン」しており、チーム/選手/ファンの全員にとって持続可能な未来を作り出すことに尽力しています。
直近4年間、私はライアットゲームズでeスポーツ事業のリーダーを務めてきましたが、これは私のキャリアの中でも特に充実した時間でした。私が心の炎を燃やす2つの事柄――ゲーミングとスポーツ――両方に取り組めることはこの上ない喜びであり、毎日インスピレーションを受け続けています。
ライアットには「届けたいプレイヤー体験」の夢を大きく描ける環境があり、私たちがよく使うフレーズであるところの「ファンの度肝を抜く」ような優れたアイデアにしっかりと投資する会社です。Worlds(League of Legends World Championship)はライアットにとって一年のうち最大級のイベントであり、地球規模でも最大級の競技イベントですが、これを実行していることがその証拠だと言えるでしょう。
"私たちは今、ライアットゲームズでスポーツの未来を構築していると確信しています。成長を続ける私たちのオーディエンスは若く、常時オンラインで、社交的で、ゲームのプレイヤーで、各種配信プラットフォーム上のゲーミング系コンテンツを山ほど視聴しています。"
この数年、私はインタビューの席で何度も「私を含むチームメンバー全員が、ライアットゲームズはスポーツの未来を構築していると確信している」と述べてきました。今回の記事は、私たちが考える未来像を皆さんにお伝えする最初の一歩です。ここではまず、eスポーツの事業的側面に触れていきます。現在は景気後退の懸念とeスポーツ事業の不確実性により、私たちのリーグ(リーグ・オブ・レジェンドeスポーツ/LoL Esports、VALORANT Champions Tour/VCT)に所属する100以上のプロチームの資金調達・スポンサー維持に影響が出ています。そういった経緯から、これは極めて重要な課題なのです。
本投稿では、長期的視点から見たeスポーツの財務的な実現可能性を、私たちが強く信じるに至った理由を説明していきます。ライアットはプロeスポーツの立ち上げから10年という期間をかけ、強固な事業基盤、世界的なリーチ、そして若く情熱的で熱烈なオーディエンスを構築してきました。オーディエンスの情熱を解き放ち、収益を出し、そして最終的には活況かつ持続可能性のあるスポーツエコシステムを構築する。その実現に向けた私たちのビジョンは極めて強固です。ここでは経緯説明として、まずライアットゲームズでeスポーツが果たす役割について見てみましょう。
ライアットがeスポーツを愛する理由
ライアットが『リーグ・オブ・レジェンド』を開発していた頃、ライアットの2人の創業者はIntel Extreme Masters Seriesや『Starcraft』/『Counter Strike』といったeスポーツシーンを持つゲームに強い憧れを抱き、いつか自分たちのゲーム(以下、LoL)もeスポーツにできたらと願っていました。やがてLoLが多くのプレイヤーに受け入れられ、競技シーンに参加したい、あるいは観戦したいという需要が高まってくると、ライアットはプレイヤーの期待を満たすようなリーグと視聴体験を検討するようになります。そしてこの「eスポーツの夢」にはもうひとつ重要な願いが込められていました。「LoLプレイヤー」を長期的・高報酬なキャリアの選択肢とし、LoLに本気で取り組むことが有意義な人生の目標になる世界の実現です。eスポーツの組織化とプロ化を推進し、プレイヤーに高品質の体験を届けたい。その願いが結果として我々のよく知る現在のeスポーツの礎となったのです。
ライアットは基本的に、eスポーツを新規プレイヤー獲得手段として用いません。そもそもeスポーツ競技の視聴者が観戦を楽しむには対象となるゲームの基礎を理解している必要があるため、eスポーツは新規プレイヤー獲得の効果的な手段ではないのです。多くの従来型スポーツは観戦を楽しむ上でそれほど知識を必要としません。ボールがネットやラインを超えれば何か特別なことが起きたと分かりますし、それは盛り上がるべきことだと理解できます。しかしLoLをまったくプレイしたことがない人がLoL eスポーツを視聴すると、画面上で何が起きているのか分からず当惑してしまいます。VALORANTはもう少し分かりやすい面がありますが展開が非常に速く、またアビリティーも飛び交い続けるため、こちらもやはり理解するのは困難でしょう。
ライアットゲームズの配信では、ゲームの基礎に関する説明にそれほど時間を割いていません。過去には「初心者用配信」なども試みていますが、ゲーム本体/eスポーツシーンに新規ユーザーを導く効果は高くありませんでした。またゲーム基礎の解説は、ゲーミング系インフルエンサー/配信者のほうがはるかに巧みです。これは私たちが近年ミラー配信を強化している理由のひとつでもあります。もちろんライアットのeスポーツ配信もエンターテインメント性は意識していますが、eスポーツの視聴者はほぼ全員が現役/元プレイヤーであるため、戦略のニュアンスや細部の解説などの技術的/教育的な面も同時に意識しています。これはeスポーツと従来型スポーツの視聴動機にひとつ重要な差異があるためです。eスポーツ視聴者は最大で60%が「自身の腕前を上げるためにeスポーツを視聴」しているのです。私がこれまでボストン・セルティックスの試合を観戦してきた数千時間が、私のバスケ選手としての技量を上げてくれれば…と思わず考えてしまいますね。
ライアットゲームズの使命は「世界で最もプレイヤー中心主義のゲーム会社になる」こと、そしてゲームに深く根ざした極上のeスポーツ/エンターテインメント体験を作ることです。現在のeスポーツは、プレイヤーの関心度を高めるだけでなく、ライアットゲームズのより大きなビジョンにも寄与しています。eスポーツとエンターテインメントの力で核となるゲーム体験を拡張・深化させ(例:エミー賞を受賞したアニメーションシリーズ『Arcane』)、ファンコミュニティーを感化していく。そんなことが可能だからこそ、私たちはeスポーツに全力を注いでいるのです。これはライアットの企業文化の核であり、私たちがひたすらにプレイヤー体験を追求する理由でもあります。私たちはゲームを水平方向には展開しません。そうではなく、プレイヤーのために深く掘り下げ、そこからプレイヤーの信頼と愛を勝ち取っていきます。そしてeスポーツは、そういった愛を加速させる触媒のような役割を果たすのです。
ライアットとチーム:パートナーシップと相互利益
私たちはeスポーツを、ライアットとパートナーの両者にとって健全な事業にしたいと考えています。成功とファン層を築きつつある多世代型ゲーム(LoLやVALORANTなど)のeスポーツ参入は、他社にとっても素晴らしい好機です。
2017年、ライアットは従来型スポーツのフランチャイズ制に近いパートナーシップ制を正式に開始しました。当時LoL eスポーツの競技チームからライアットに求められていたのは、スポンサーや選手との複数年契約を可能にする公式リーグを通じ、長期的な活動を可能にすることでした。競技チームはリーグ参加費として最大1000万ドルを支払い、それに対して各種特典やリーグ売上高(利益ではなく)の50%が支払われました。またライアットからはeスポーツ系コンテンツのデジタル売上の一定割合、および国際大会参加チームに対する賞金分配金も支払われました。このLoLパートナーシップモデルはeスポーツ事業をさまざまな点で助けてくれましたが、スポンサーシップの販売や配信権利の交渉などはライアットにとっても初めてのことだったため、一定の収益を生み出すようになるまでには想像以上に時間がかかりました。
またプロチームも最大1000万ドルの参加費用を支払うため、投資家から巨額の資金を調達する必要に迫られました。当時はeスポーツが大変な盛り上がりを見せており、各チームは大型の資金調達も進めることができました。こうして調達した資金はパートナーシップ費用の支払い、そして高額報酬によるトッププロ獲得に用いられ、結果的に選手報酬の上昇率が収益の上昇率を大きく上回る事態となり、プロチームの現金準備金は急速に枯渇しました。
ライアットはこうしたプロチームに対して重い責任を感じており、厳しい現状においても財務的支援をしていけるよう取り組んでいます。直近数年では50%のレベニューシェアに最低保証額を設定することでチームの収益予測性を改善したほか、チームへの支払い期間の短縮、チームからライアットに対する支払いの延期/分割、新たな収益機会の開拓などを進めています。しかしこれらの施策はいずれも短期的なものであり、エコシステムとして見た場合には投資家がeスポーツ事業の中長期的な見通しに自信を持てるようにするため、一層努力を重ねていく必要があるでしょう。
このような経緯から、VALORANT Champions Tour(VCT)の構想に着手した時にはチーム事業の課題をしっかりと意識し、チームが参加に際して求められる費用を抑え、ライアットと参加チームがビジョン・歩調を揃えてeスポーツの発展に取り組めるパートナーシップモデルの構築を目指しました。このVCTパートナーシップモデルでは、プロチームはリーグに参加するための費用をライアットに支払いません。そうではなく、マーケティング活動や配信用コンテンツの制作、VCTイベントでのファン向け活動、プロ選手のサポートなどに投資することで出場スロットを維持するしくみになっています。このモデルでは、ライアットはプロチームに固定額の年間報酬、eスポーツ系コンテンツのデジタルセールスの一部、参加大会の賞金分配金、および基本要件を超える追加マーケティング活動へのインセンティブを支払います。参加チームが資金をライアットに支払うのではなく、選手、マーケティング、設備、コンテンツ、コミュニティー、事業構築に費やすモデルとも言えるでしょう。
eスポーツ事業は、従来型スポーツよりもゲーム事業に近い姿になる
ライアットゲームズがeスポーツをスタートしてからの10年間で学んだ教訓の中でも特に重要だったのが、「eスポーツ事業を従来型スポーツのように考えるのはやめるべき」ということでした。eスポーツを好む層にはミレニアル、Z世代、アルファなどのいわゆる「地球上で最も価値のあるデモグラフィック」が含まれます。そんなデモグラフィックに対し、ライアットゲームズのeスポーツは凄まじいスケールでリーチします。2021年のWorlds決勝では、最高同時視聴者数(PCU)が全世界約7400万人、平均視聴者数/分(AMA)は約3100万人を記録しました。これは一瞬だけの視聴もカウントするページビューやユニークユーザー数ではありません。PCUはある瞬間におけるグローバルな視聴人数、AMAは配信時間全体の平均視聴者数を示す数値です。私たちはこのPCUとAMAを最上位のパフォーマンス指標としています。eスポーツファン層の成長を把握する上で最適で、スポンサーにも理解しやすい数値であるからです。数年前、私たちはNielsenと協力し、スポンサーが従来型メディアへの投資効果を追跡するときの指標と比較しやすいようにAMAおよびPCUの開発・定義・算出も実施しています。
ライアットゲームズのeスポーツはこのデモグラフィックに効果的にリーチすることに成功し、スポンサーシップ事業の規模拡大を果たしました。私たちのスポンサーシップ事業では収益だけを追求せず、コラボレーションを通じてプレイヤーにクールなものを届けられるブランド(例:ルイ・ヴィトンとリーグ・オブ・レジェンドのコラボスキン)を探すという独自のアプローチを採用しています。収益だけでなくMercedes-Benz、Mastercard、Tiffany、Coca-Colaといった高品質ブランドのハロー効果がeスポーツとオーディエンスのイメージを高めてくれる点も、この事業の素晴らしい点だと言えるでしょう。またスポンサーには常に最高の価値を届けられるよう取り組んでおり、これまでもスポンサーに投資額の5~7倍に相当する価値を提供しています(試算:Nielsen)。スポンサーシップ事業の難しさは、スポンサーカテゴリーの種類には限りがあること、そしてオーディエンスの大きさが必ずしも収益と比例しないことでしょう。
eスポーツビジネスモデルを従来型スポーツと比較すると、放送権の収益がない点が大きく異なります。NFL、FIFA、NBA、F1…いずれも放送権事業で数十億ドル規模の収益を上げていますが、その放送プラットフォームは主にリニアテレビ(リアルタイム視聴前提のテレビ放送)です。しかしリニアテレビとeスポーツコンテンツの相性は今も昔も良くありません。これはオーディエンスが根本的に異なるためで、ライアットのオーディエンスの大半はESPNやFOX Sports(米国のスポーツチャンネル)を視聴していません。彼らが見ているのはTwitchやYouTubeの配信者です。一方、ESPNやFOX Sportsの視聴者は一般的に私たちのゲームに馴染みがなく、eスポーツは「まるでピンとこない」コンテンツです(『NBA2K』など従来型スポーツのゲームを除く)。
ライアットはプレイヤーがいるところすべてにコンテンツを届けたいと考えており、現在は欧米の配信プラットフォームでeスポーツを非独占的に配信しています。しかし欧米市場におけるこのモデルは、競合の不足、広告収入の弱さ、そしてTwitchやYouTubeなどの配信プラットフォームがプレミアムコンテンツ(この場合はeスポーツ)に対して金銭を支払う構造がないというビジネス上の問題を抱えています。数年前に欧米の配信プラットフォームがライアット以外のeスポーツと大型独占契約を締結したことがありましたが、これも親会社の大型インフラ契約の一部という扱いでした。しかしこれらの契約はいずれも黒字化せず、欧米の配信プラットフォーム契約は低収益広告の純粋なレベニューシェアモデルに逆戻りしました。このためライアットは、高価値オーディエンスから数十億という視聴時間を生み出しているにもかかわらず、欧米の配信プラットフォームからは実質的にほぼ収益を上げていません。しかしプロチームには支払いをせねばなりません。では、リニアテレビにも欧米の配信プラットフォームにも放送権を販売することなく売り上げを立てるにはどうしたらよいのでしょう?
eスポーツには従来型スポーツにはなかった大きな強みがあります。それは「視聴者とダイレクトに繋がっている」ということです。ライアットゲームズの視聴プラットフォーム Lolesports.comでは、TwitchやYouTubeの埋め込み型動画プレイヤーを利用していますが、ここでプレイヤーがライアットアカウントにログインしたままeスポーツコンテンツを視聴すると、プレイヤーには観戦報酬が付与されます。また最大規模のイベントでは、観戦/プレイすることでゲーム内デジタルコンテンツ(ゲーム通貨、エモート、スキンなど)報酬がアンロックされていく「イベントパス」も発行しています。またライアットの視聴プラットフォームには「ドロップ」と呼ばれる機能があり、スポンサー提供のデジタルコードを配信上から視聴者に直接プレゼントしています。この「ドロップ」は私たちのスポンサーがファンと仮想的につながる手段として活用していましたが、新型コロナウイルス感染症で有観客イベントが開催できなかった期間には特に意味深いものとなりました。
イベントパスやドロップはプレイヤーの間でも非常に好評で、今や主要eスポーツイベントでは欧米視聴者の実に40%がライアットの視聴プラットフォームで観戦するまでになりました。視聴プラットフォームは現在も追加機能を開発中で、今後は配信を通じてデジタルグッズ/サービスを直接ファンに販売できる、高機能な販売プラットフォームへと進化させていきます。最終的にはこのプラットフォーム上で選手のことも知れるようにし、その上で視聴者の求めるあらゆるデジタルグッズ/サービスが購入できるようにしていくつもりです。
進化する視聴プラットフォームでは、やがてプロ選手があなたのお気に入りチャンピオンをピックすると、そのチャンピオンの未所持スキンがオススメ表示されるといったことも可能になるでしょう。あるいは、たとえばとあるプレイヤーがT1の試合を欠かさず見ているのにT1のエモートやサモナーアイコン、そして「T1ファンパック」(チームメンバーや他のファンと交流できる特別チャットチャンネルへのアクセス権付き)を購入していなかったとします。そのプレイヤーが次回T1の試合を視聴しようとログインした時に、T1ファンパックを勧め、その売上がT1とどうシェアされるのかを細かく説明するフローを導入することも考えられます。eスポーツファンが購買活動を通じて応援チームを直接支援する手段です。
デジタルeスポーツコンテンツはライアットの販売するゲームコンテンツの中でも特に売れ行きが良く、LoLスキン累計販売ランキングのトップ6のうち3つはeスポーツテーマのスキンです。そして、売上のかなりの割合はチームと選手に還元されています。たとえば2022年のVALORANTではVCT CHAMPIONS 2022スキンパックの売上が4200万ドルに達しており、その収益の半分がトーナメントに出場したチームに分配されています。『DOTA2』のThe International Battle Passもまた、愛するゲームのeスポーツを支援するためにファンが貴重なお金を投資する好例のひとつです。
とはいえ、LoLのように大規模/グローバルなタイトルのゲーム内コンテンツを製作するには色々な課題があります。LoL eスポーツでも、エコシステム内の全チームに一定の収益を分配できるほどの売上を生み出すゲーム内デジタルeスポーツコンテンツを制作するのは極めて困難です。これはLoL eスポーツエコシステムが約100チームを擁し、LoLが世界屈指の人気を持つPCゲームであることの弊害とも言えるでしょう。LoLは全世界どこでプレイしても同じゲームです。このため特定チームのデジタルコンテンツというのは、これまでWorlds優勝を成し遂げたごく限られたチームだけのものでした。しかしこの数年、LoLゲームチームはかつてないほどeスポーツ系ゲーム内コンテンツを制作してきました。これを受け、現在はプロチームの利益となるゲーム内eスポーツコンテンツを新規案まで含めて幅広く検討しています。またVALORANTではLoL eスポーツで学んだ教訓を活かし、VALORANTインターナショナルリーグに参加するプロチームの数を意図的に30チームに制限することで、チーム専用ゲームコンテンツの開発・実装をしやすくしています。
現在ライアットのeスポーツ(LoL eスポーツ、VCT、そしてTFTを筆頭とする未来のeスポーツタイトルを含む)では、視聴プラットフォームの進化の一環として、ファンが交流/自己表現/ファン愛自慢できるゲーム外体験も構築中です。視聴体験やバーチャルクラブハウスを通じ、プレイヤーがゲーム外でもデジタルグッズ/サービスを楽しめる環境を提供できれば、それはあらゆるeスポーツチームにさまざまな機会を生み出し、ライブスポーツ視聴体験を強化することになるでしょう。
eスポーツデジタルグッズ/サービスを直接視聴者に販売することができれば、それは放送権事業という大きな穴を埋めるスケール性の高い収益源となります。「配信を見る視聴者から直接的に得られるデジタルな収益源」は、従来型スポーツ事業の課題を解決しながら新たな可能性を切り拓ける分野のひとつであると私たちは考えます。この領域には新プロダクト/サービスのチャンスが――ファンが愛し、eスポーツ視聴体験を強化し、ファン愛を表現する新たな手段となるアイデアが――まだまだ眠っています。
ファンの新たなかたち:バーチャルライブイベント体験
従来型スポーツの事業における収益は、ライブイベントのチケット/物品販売権/グッズによるものがかなりあります。一方でeスポーツのライブイベントは、現在の私たちの事業にとってそれほど大きな存在ではありません。eスポーツのファン層は(都市単位ではなく)グローバルであり、またeスポーツ自体が仮想的な性質を持つため巨大アリーナやスタジアムがなくてもトーナメントが開催でき、ほぼ全員の視聴者がオンラインでのみ視聴します。だからこそ、各チームがライブイベントでマネタイズする手段は極めて限定的です。この課題を解決するため、現在私たちはバーチャルチケットプログラムを構築しています。新プログラムで目指す目標は2つ。私たちのイベントをオンライン視聴するファンの体験を強化すること。そして収益を生み出すことです。
Worlds 2023より、ライアットはオンラインと現地のファンエンゲージメントを橋渡しする新プロダクトのテストを開始していきます。ひとまずこれを「バーチャルパス」と呼ぶことにしましょう。バーチャルパスを通じて私たちがファンに届けたいものは次のとおりです。
- Worldsのリッチなオンライン視聴体験
- 高品質・高価値なプロダクト/サービスのバンドル
- ファン魂と興奮を表現する新たな手段
さらに追加目標としてeスポーツチームの収益をサポートすることも目指します。
Worlds 2023のバーチャルパスでは、デジタルプロダクトのバンドル(Worldsスキンの限定バリエーション、ゲーム内イベントパス、その他限定コンテンツ)と独自の物理プロダクト(限定Worldsグッズ)、そしてスポンサー提供の物理/デジタルプロダクトが提供されます。そして2024年以降はLoL eスポーツ側での提供内容を拡充しつつ、VCTにもバーチャルパスを導入していきます。併せてファンがeスポーツを一層間近で体験できるような実験的機能の実装も進めていき、ゲーム内カメラ(チャンピオンやエージェントをロックして視聴できる機能)やライブイベント会場周辺のカメラへの特別アクセス権、限定チャットチャンネルやラウンジ、デジタルコレクショングッズ、特別なアイコンやボーダーなどのステータスアイテム、あるいはイベントの配信に限定ファンのメッセージを表示する機能なども考えられるでしょう。もちろんこれらはまだ単なるアイデアで、中には実際に導入されない機能もあるでしょう(と私は常々社内チームに念を押されています…)。
この「バーチャルパス」の設計では特定チーム専用バージョンが制作できる構造を意識しており、バーチャル/物理グッズの提供、更にはプロチームルームのアクセス権、プロチームとの限定チャットチャンネル、選手との交流機能なども提供できるようにしています。ここで私たちがプロダクト設計を正しく進められれば、ファンに優れた体験を提供し、応援する選手やチームとの繋がりを生み出しつつ、チームに新たな収益源をもたらす仕組みができるはずです。
スポーツの未来
私たちは今、ライアットゲームズでスポーツの未来を構築していると確信しています。成長を続ける私たちのオーディエンスは若く、常時オンラインで、社交的で、ゲームのプレイヤーで、各種配信プラットフォーム上のゲーミング系コンテンツを山ほど視聴しています。私たちは最初の10年で実に多くのことを学び、「ファンがスポーツ体験に期待すること」も、eスポーツをプロチームや関係者にとって持続可能な事業にするためのビジョンと計画も、かなり明確に掴めたと考えています。
ライアットはeスポーツに「オールイン」しています。現在開発・投資を進めている視聴プラットフォームやバーチャルチケットシステムも、プレイヤー、ファン、チームの全員にとって良いものにしていきます。今年のWorldsとVCT、そして2024年には、そんな未来の一端をお披露目できることでしょう。
– John
John Needham
John Needhamはライアットゲームズのeスポーツ部門プレジデントとして、League of Legends Esports、VALORANT Champions Tour、および組織的プレイ関連の各種イニシアチブを統括しています。ゲーム業界歴は20年以上、カレッジフットボールではIowa Hawkeyesの大ファン。一日の始まりには必ず、まずTFTを1試合(またはそれ以上)プレイします。